白内障と放射線
水晶体は放射線感受性が最も高い臓器であるため、被ばく量が多いと白内障になります。放射線白内障は初期ではVacuoles(図1)やdot等の微小混濁が発症し、進行すると後囊下白内障(図2)になることが知られています。原爆被ばく者やチェルノブイリ原発事故の作業従事者の多くが白内障を発症していることがわかっています。国際放射線防護委員会(ICRP)は、日本での放射線業務従事者の線量限度を100mSv/5年かつ年間50mSv以下、緊急事態における作業に対しては100mSvを超えないことと勧告しています。短期間に大量の放射線被ばくを受けた場合に白内障の発症リスクがあがることは知られていますが、少ない放射線を長期間慢性的に浴びた場合も、水晶体への影響は同様であることが懸念されています。2011年に起こった福島第一原発の事故対応にあたった作業従事者に対しては、日本白内障学会が中心となって調査が進められています。また職業被ばくとして医療従事者や宇宙飛行士の白内障発症のリスクがあがることも明らかになっています。特に近年、CTの技術を応用した脳血管内治療の実施件数が年々増加しているなかで、エックス線という放射線の透視時間や撮影回数の増加に伴う患者および医療スタッフの白内障リスクが大きいことが考えられます。放射線の業務に携わる方々に対しては、放射線防護用の眼鏡やゴーグルの使用が推奨されます。
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