白内障の薬物治療
現在、白内障を治す薬物は残念ながらありません。しかし、白内障の予防効果がある薬として、現在日本では以下の薬が認可され、病院で処方することができます。
実際には、現在ほとんどの眼科においては、ピレノキシンまたはグルタチオン点眼液のみ処方されています。(内服薬は、古く承認された薬剤であり、現在の基準でみるとその効果には科学的根拠が証明されていません。) 現在使用可能な抗白内障薬
点眼液
•ピレノキシン(カタリン®, カリーユニ®):白内障惹起物質であるキノイド物質の水溶性タンパクへの結合を競合的に阻害 •グルタチオン(タチオン®):抗酸化作用 内服 •チオプロニン(チオラ®):タンパク質不溶化抑制作用 •唾液腺ホルモン(パロチン®):タンパク質不溶化抑制作用 ピレノキシン(カタリン®)点眼液に関しては、程度の軽い皮質型の白内障に使用した場合に、白内障の進行を遅らせる効果があったことが報告されています1)。
また、ピレノキシン点眼が目の調節力の低下を抑制したという報告があり、ピレノキシン点眼による老視抑制効果も期待されています2)。 サプリメントによる白内障予防 海外の大規模疫学調査で、マルチビタミンミネラルやルテインなどのサプリメント摂取による白内障予防効果が報告されています。これらサプリメントによる白内障の進行や発症を遅らせることができる可能性があります。抗酸化・抗糖化作用のあるサプリメントは、白内障予防効果のあることが動物実験でも報告されています。 今後、高齢化により白内障患者は増加します。医療費の削減、白内障術後の合併症による視力低下の予防、生活の質の向上や保持のためにも、薬物による白内障進行抑制による手術時期の延長が必要です。よって、白内障治療および予防薬の開発が望まれています。 1) Kociecki J et al. Klin Oczna Polish 106(6):778-782, 2004. 2) Tsuneyoshi Y, et al: Sci Rep 7: 6819, 2017 3) Moeller SM, et al. Arch Ophthalmol. 126: 354-364, 2008. |