水晶体の構造と再生
水晶体は、生体内で最も厚い基底膜といわれているタイプⅣコラーゲンを主成分とした水晶体嚢(カプセル)で包まれています。水晶体の前極部から赤道部にいたる水晶体嚢の内側には、水晶体上皮細胞が単層で配列していますが、彎曲部で水晶体嚢から離れて水晶体の内側に押し込まれながら前極部と後極部に向かって伸長して水晶体線維細胞、さらに細胞死(アポトーシス)をおこすことなく細胞の核が消失(脱核)して水晶体線維となり、水晶体核(成人核)を取り囲んでいきます。水晶体の中心には、発生段階で形成された水晶体核(胎生核)が排除されることなく、生涯にわたって保存されています1)。
これまで水晶体の組織標本作製は非常に困難でしたが、新たに開発された固定液を用いることで著しく改善され、詳細な水晶体の組織形態観察や免疫組織化学的手法を用いた研究ができるようになり、水晶体の組織幹細胞の存在が明らかとなりました2)。
一方、前嚢下の水晶体上皮細胞の細胞周期は、ほぼ停止しています。しかし白内障手術で混濁部位が除去されると細胞増殖が始まり、後発白内障となることがあります3)。つまり、水晶体上皮細胞は保存された組織幹細胞のような一面を持ち合わせているともいえるでしょう。 眼の視機能再生において、水晶体を構成する細胞集合体の透明性は必須です。現在、iPS細胞などを用いた水晶体の再生に関する研究も行われています4)。 日本白内障学会では、白内障や水晶体研究に興味を持っていただける研究者との共同研究の橋渡しに取り組んでいます。お気軽に事務局までお問い合わせください。 参考資料
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