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水晶体タンパク質の特徴
 水晶体のタンパク質は、他の組織と同様に水溶性タンパク質と不溶性タンパク質に分けることができ、水溶性タンパク質のほとんどはクリスタリンタンパク質(クリスタリン)です。クリスタリンは、水晶体に特異的な構造タンパク質であり、脊椎動物では、α、β、γの三種類が報告されていて、加齢によってその比率は変化します。その他、種特異的なクリスタリンも存在し、例えばδ-クリスタリンは鳥類および爬虫類の水晶体でγ-クリスタリンの代わりに存在していることが知られています。水晶体は構造的に、外側に基底膜を持ち細胞が分化するにつれて中へ押し込められます。そのため、水晶体の細胞およびタンパク質は外側に脱落することがなく、新しく作られた外側のタンパク質と内側の古いタンパク質を比較することで、加齢によるタンパク質の構造変化を研究するには、理想的な組織であると言われております。水晶体タンパク質の加齢変化は、酸化、脱アミド化、異性化などが知られています。
 水晶体の膜タンパク質は、血管系をもたない水晶体での細胞相互の情報交換および分化におって重要な働きを担っていることが知られており、水晶体線維細胞膜タンパク質の75%以上を接着に関与するタンパク質で占められています。水晶体膜タンパク質の30%以上は、水晶体特異的な水チャネルであるアクアポリン0(AQP0:別名MIP)が発現しております。AQP0は他のアクアポリンとは異なり、水をほとんど透過しないこと、そして細胞間接着に関与することが明らかとなってきました。アクアポリン0の次に多い膜タンパク質は、コネキシン50(Cx50:別名Gja8)です。コネキシンは、細胞膜上で6両体(コネクソン)を形成し、向かい合う細胞膜に局在するコネクソンと接合することで細胞間ジャンクション(Gap Junction:GJ)として機能し、水やイオン、物質を透過することで、水晶体の恒常性維持に寄与しています。Cx50以外に水晶体にはコネキシン46(Cx46:別名Gja3)、コネキシン43 (Cx43:別名Gja1)の発現が報告されています。
 日本白内障学会では、他分野との交流・共同研究を積極的に行っております。水晶体や白内障は体外から非侵襲的に簡単に観察することができます。動物実験などで遺伝子をノックアウトしたら水晶体に異常がみつかった、白内障を発症したなどの情報をいただけましたら、本学会員との共同研究の橋渡しをすることも可能ですので、学会事務局までご連絡ください。
参考資料
  1. Takata T, Matsubara T, Nakamura-Hirota T, Fujii N. Negative charge at aspartate 151 is important for human lens αA-crystallin stability and chaperone function. Exp Eye Res. 182: 10-18, 2019.
  2. Fujii N, Sakaue H, Sasaki H, Fujii N. A rapid, comprehensive liquid chromatography-mass spectrometry (LC-MS)-based survey of the Asp isomers in crystallins from human cataract lenses. J Biol Chem. 287: 39992-40002, 2012.
  3. Nakazawa Y, Oka M, Funakoshi-Tago M, Tamura H, Takehana M. The Extracellular C-loop Domain Plays an Important Role in the Cell Adhesion Function of Aquaporin 0. Curr Eye Res. 42: 617-624, 2017.
 
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